山木秀夫「There He Goes」レコーディング風景

今回プロデューサーを引きうけて下さった清水靖晃氏。昔からのフュージョンファンにはもちろんKAZUMI BANDやマライアでのプレイは鮮烈な記憶としてあるだろうが、清水氏の音楽は近年取り組んでいるバッハ演奏や数多くの映画音楽に聴かれる様に非常に多彩。様々な音楽を自在に行き来し、またその周辺を巡る氏のスタンスは独特のものがあり、例えばジャズプレイヤーがボサノバを演奏してみるとか、ロック・プログレ的に変拍子で激しく演奏するとか、そういった表面的なものではなく、氏の天才鬼才と言われる才能がおおくの音楽を内包していくというような、、、

全身の血が逆流するかの如きフリーなSax、その中に一瞬現れて消えていく繊細な音の断片、短波ラジオを手にし、バラフォンとからむDj的プレイ、、、
ここで収録された清水氏の演奏はその才能の本質の一部を確かな姿として捕らえた貴重なものである。

ドラムとのDuoでピアノ(完全な即興)を、サックス、ドラム、ベースの編成でハモンドオルガンを演奏してくれたゲスト、上野耕路氏。細野晴臣氏のレーベルで活躍されたり(コシ・ミハルのプロデュースなど素晴らしいです)、自身も現代音楽的な作品をリリースしている日本では他に類を見ないピアニスト。膝を組んで背中を丸めながら演奏に没頭していく姿はグレン・グールドのよう!
ZiZOレーベルではおなじみとなった巨匠山木。自己のリーダー作品ということでいつもと違った緊張感も漂う。清水靖晃&山木秀夫と言えば80年代KAZUMI BAND、マライアで日本のフュージョンのクリエイティブな側面を1手にひき受けた存在であることは多くの人に知られているが、本作品での2人のプレイは常に根底に2人が持ち続けてきた音楽への向き合い方の本質をかなり分かりやすい意味で浮かび上がらせていると思う。清水のSAX、山木のドラムスはもちろんだが清水が短波ラジオを持ち、山木がヴァラフォン、そしてピアノ(!)を奏でる、、、彼らが楽器の前に立つ瞬間に音楽が生れ落ちるような、何か生活(人生)と音楽の繋がりが「職業=ミュージシャン」という事とは違ったものを感じさせる。現在山木はファーストコールのスタジオミュージシャンとして、清水はサキソフォネッツプロジェクトでのバッハ演奏で確固たるステータスを築いているがその根底にここで聴かれる”野獣”が潜んでいる事を多くの人に知って欲しいと思う。