このページはZiZOレーベルプロデューサー、石原忍が気ままに綴るdialyのような物です。
たわいもない話ですがその中に少しレーベルの意思が見え隠れしているかも知れません。

2003年

・9月21日(日)

かなり前の映画だと思うが、好きな映画監督であるリュックベッソンの「WASABI」(ジャン・レノ、広末涼子出演の東京が舞台の映画)のビデオを観ていたらフィッシュマンズの「IN THE FLIGHT」が流れていて印象的だった。それはとても”東京”を感じさせるものだった。フィッシュマンズは本当に素晴らしいパーフェクトなロックバンドであったが「IN THE FLIGHT」、「ナイト・クルージング」、「WETHER REPORT」、といった多くの名曲の声であった佐藤伸治氏の死が惜しまれる。現在他のメンバーは東京スカ・パラダイス・オーケストラ、Polaris、リトル・テンポといった場所で大活躍をしていて、いずれもフィッシュマンズが持っていた若者らしくも深く浸透して行く精神性の投影、音楽的な技術とチャレンジスピリットを引き継いでいる事は日本の音楽シーンの財産であると思う。

2002年

・8月11日(水)
向井滋春クインテットのDVD制作ライブへ招待され出向く。三井物産の出資会社が企画し、ブロードバンド時代のコンテンツとして音楽ソフトを確保していこうというもの。今後インターネット配信、DVDソフトとしての発売を目指していくという。過去にジャズを含めて音楽ソフトはもちろんたくさんあるがそれらを2次使用するには多くの権利関係のクリア、新たに発生するギャランティーなど問題点が多すぎる。その為当初からブロードバンド使用を意図した新たなソフトを制作した方が話が早い。もちろんジャズ業界も活性化されるしまた邦人ジャズアーティストの映像ソフトは一部を除き流通していないので何よりもファンが喜ぶのでは?たまたまライブで出会った関西電力の方(関西電力では大阪地方で光ファイバー網を活かしたアニメ、映画、音楽のソフト配信事業を実験的に行っている)と話を聞いたがジャズの番組は最も申し込み率が高いのだという。ネット配信では普段のTV放送ではフォローしきれない例えばなつかしのアニメやスポーツ、格闘技、そしてジャズやワールドミュージック、クラシックなど隙間をフォローしたコンテンツが注目を集めそうだ。
ZiZOでも今後映像を含めたソフトを制作していく事も面白そうだ。

・4月28日(日)
27日&28日と新宿PIT INNにてビル・ラズウェルライブを見る。メンバーは清水靖晃&山木秀夫とのトリオ。先日リリースされたばかりの山木秀夫「There He Goes」と多くの共通点を持ったライブであり、ZiZOレーベルとしてはそのレコ発ライブ的な意義も見出していたので興味深く2日間を堪能。
27日は清水氏のパフォーマンスが圧倒的で憑かれたようにステージを彷徨い、叫び、SAXを吹き、バラフォンを突然たたき出す動きすべてが会場の空気を支配していた。28日は山木&ビルによる重く沈みこむようなファンクリズムの上を中近東的であったり、日本の童謡的、はたまたキャンディー・ダルファー(!?)的もろファンキーフレーズをコラージュのようにちりばめる清水氏のプレイが印象的であった。

両日共にかなり3人の個性を表出したステージで、ライブ終了後の観客からは「最高!!」という声と共に「最悪だね」という声もかなり聞かれた。それらは率直な感想の言葉として共にもっともシンプルにわかりやすい言葉であるが、このメンバー3人の音楽への関わり方はステージで演奏し、それに対して単に拍手を得ようとする事のみを目的としているのではない事は明らかだと思う。このライブのどこまでを主役であるビル・ラズウェルが意図してプロデュースしていたかは分からないが、清水靖晃氏のプレイ、パフォーマンスが表現していた予定調和を一切排除した摩訶不思議な空気は音楽を奏でるという事、ステージに立つという行為、それらに対する厳密な考察が示されていたようにも思う。

昨今のあまりにも予定調和なフュージョン、ジャズ、ロック、それらの様式を完全に取り払ったところに現れる演奏者の人格。音楽に「あちら側の世界」と「こちら側の世界」があるとすれば(別にそれらはどちらがどちらであってもよいのだが)、今回のライブはその間に位置する踏み絵のようなものであったのではないか?

・4月22日(月)
本日山木秀夫「There He Goes」、WYSIWYG「Reflector」の2タイトルが発売となる。WYSIWYGはZiZOでは「b」、「Elevation」と快作をリリースしているギタリスト矢堀孝一と実力派キーボーディスト新澤健一郎を中心としたグループで今作は2作目となる。1stを出してからかなり時間が経っていることもあり1stとはだいぶ違ったサウンドが聴かれる事と思う。個人の旨さを前面に出すべくプロデュースされた楽曲が中心であった前作に比べ今回はトータルなバンドの音として極めて高い音楽性を表現している。メンバーそれぞれがJazz・Fusionシーンの第一線で活躍し続けているだけあって”旨さ”の質が深みを増してきているのかも知れない。このバランスを手に入れた後今後何処に行くか、グループにとってそれはとても大きく重要なものだと思う。

山木秀夫作品はそういった若手ミュージシャンが向かう音楽性の扉を開け、可能性を無限に押し広げるような、”何ものにも束縛されない表現の力”を究極的に示した驚異的な作品であると思う。
プロデューサーの清水靖晃氏はじめ参加ミュージシャンすべてがどこにも属さない”自分の音=自分自身”を鮮烈にそこに刻んでいる。ドラム・マガジンはじめマスコミ、各店舗の売り場担当者、ネット通販での評価も非常に高い。ネットでの先行発売でいち早く聴いたファンから寄せられる熱烈な反応をみていると「売れ線」とかいう概念が一般的に思ってしまうそれとずいぶんかけ離れてきているような気もする。皆が聴きたいと思っている音楽、出会えてよかった、また聴いてみたいと思える音楽を「売れ線」というのであれば山木作品はまさに「売れ線」だ。日本のJazz・Fusionシーンが下火になって久しいがそこには様々な要素、要因があるのだと思う。(それについてはまたここで少しずつ述べてみます。)
山木作品のオビにつけられたコピー、「まず、それを破ったのは山木だった、、、」、”それ”には本当に様々な意味が込められているし、聴いた人皆が明らかに”山木秀夫が何かを打ち破っている”事を実感することと思う。

2001年

・12月22日(土)
昨日21日、オルガン奏者の大高清美のサードアルバム「Out of Sight」が発売となった。 このアルバムはZiZOレーベル初の海外録音となったもので、10月にLAで収録された。 共演はデイブ・ウェッケル&ゲイリー・ウィリスで、フュージョンというジャンルを広い意味で 好むファンにはたまらない魅力を持つメンバー。このプロジェクトは大高清美自身が数年 来持ちつづけた夢であり、実際彼女は熱烈なラブコールを2人に送り、自身の力でこの プロジェクトを実現させた。企画が先走り、アーティストがパズルのように組み合わされただけのアルバムも多い中、(言葉のコミュニケーションも不自由な)ミュージシャン同士が 国境を超えて結びついていく過程は根源的な音楽の素晴らしさ、奏でる楽しさにとりつかれたミュージシャンのピュアな姿で感動的であった。 結果はもちろん悪いはずがない。Great!!

・12月12日(水)
来年2月にレコーディングすることとなった山木秀夫の久しぶりのソロアルバムの打ち合わせにプロデュースをお願いする事になった清水靖晃氏のオフィスへ行く。
清水氏は山木氏とはKAZUMI-BAND、マライアと日本の音楽シーンに名を刻むグループに共に在籍し、最近も2人でDUOライブなどをおこなっている、いわば盟友という仲。KAZUMIBANDは私にとってもかけがえない音楽体験であり、また清水氏がここ数年演奏しているバッハは愛聴盤でもある。
そんな雲の上の人といってもよい憧れの大音楽家を前に少々緊張。実際は物凄く気さくな話好きな方なのだが、やはりそのたたずまいは才気みなぎるものがある。 以前あの笹路正徳氏(清水氏とはマライアで一緒であった)が「清水靖晃の音楽的才能は日本人としては歴代最高だろう。だれもあいつにはついて行けない。」と言っていたのを思い出す。才気という意味では今の日本の音楽シーンでこの2人を超える者はいないであろう。来年2月、どのような音楽が目の前に現れるのか、想像しただけでもぞくぞく する。

・12月1日(土)
昨日は矢堀孝一の新作『Elevation』のレコ発ライブが六本木ピットインで行われた。 満員の盛況でにぎやかであった。『Elevation』は誰が聴いても間違いなく傑作といえる素晴らしい作品あると思うが、ライブはまた格別。
お客さんもこのトリオの素晴らしさを身を持って体験し、日本人がこのレベルで音楽をクリエイトできる事に驚きをもって接していた。日本のJazzのレベルの低さ云々と安易なマスコミはそれに続く「やっぱり外人は、本物は違う」と言う言葉の軽薄さをかえりみずに記事を書くが、一度この音を聴いて欲しいものだ。 まあもったいないのでそこにいたミュージシャンと私達観客だけの素晴らしい体験という 事を喜びたい。

・7月26日(木)
昨年リリースしたアルバム『b』に続き、今年もギタリスト矢堀孝一氏のソロアルバムを来月レコーディングすることとなった。メンバーは矢堀(Gt)、岡田治郎(B)、山木秀夫(Ds)のギタートリオ編成。『b』とはベースが水野正敏氏から岡田氏に変わっただけの違いではあるが、なにせギタートリオであるだけに2人のプレイヤーとしての大きな違いもあって そのへんがどういったことになるのか楽しみではある。

矢堀孝一のギタリスト=ミュージシャンとしての魅力とは例えばアドリブプレイに感じられる ”腰の強さ”というか、すごく大きな存在としてゆるぎのないものとして存在するフレーズ。それは”Fragile ”で培ってきた難曲をものにする適応力やリズムを引っ張る強靭なアーティキュレーション、もちろんそれを支えるおそらく日本では指折りのギターテクニックに支えられている。また、プロデューサー的視点を持つ彼は自身を表現する器(それはFlagileなどのグループコンセプトであったり、またそれぞれに提供する楽曲であったりする)に非常にコンセプチュアルなこだわりを持っている。そういった中にわずかな”あやうさ”を醸し出すギターのトーンはまさに”スリリング”といえる。

山木秀夫氏は昨年8月のこのページでも触れたが、「魂のこもった」としか形容できないそのプレイは圧倒的。私などからするとドラムセットを操るその姿にまず心を奪われる。テクニカル一辺倒の小手先のギミックに頼るドラマーが多い中、楽曲を感じ、そこに魂を吹き込まんとする姿勢は、やはりアーティストなのだと思う。

「矢堀×山木+α 」な音は私自身が個人的に一番聴いてみたい音楽であり、その音楽の成熟する過程を自分のレーベルで見つめる事が出来る事はこの上なく恵まれたこと。

・2月4日(日)
八向山(向井滋春、山下洋輔、八尋トモヒロ からなるグループ)のライブを見に静岡へ。
5年程前に見て以来だったがその演奏は日本のJAZZを創り続けてきた巨匠ならではの伝統と進化と技術と集中力の賜物で、「JAZZとはこういう音楽なのか」と、ホールのお客さんも大満足であったと思う。
先月12日に『向井滋春 SUPER 4 BRASS』を我がZIZOレーベルからリリースしたが、
そこでの音楽も含めてそういった巨匠達の作り出す音楽は非常に深く、広く根をおろしている強度や暖かさがある。
山下洋輔氏の姿を見ながらその人の音楽が私の中に”戦うJAZZの近寄りがたい魅力”を育てて くれた事を改めて思い起こした。

八尋さん、今度一緒に釣りに行きましょう。

2000年

・10月6日(金)
我がZiZOレーベルの5作品目、”篠田元一PIVOT”が本日発売となる。
ジャズ・フュージョンというジャンルで作品をリリースしつづけるのは苦労をしいられる事が多い。
それは単にPOPS等と比べて注目度が低いジャンルであることに起因すること。 数百万枚といった話題が盛んなPOPSに比べてこちらは数百枚、数千枚単位で一喜一憂しているのだから地味なのは当然。 かといってそういった状況を憂いでいるわけではなく、むしろそれは健全な状況。 アーティストの存在感や才能、そこに投資される莫大な制作費と宣伝費、メディアによる拡張。 そこには夢やエンターテイメント、感動がある。若い人達は夢中になるだろう。

我々はそういった拡張されたエンターテイメントから少し距離を置いたところでより個人的な 喜びと感動にひたれる音楽を創ろうとしている。
その中で出来る限りの売るための努力をし続けなくてはいけない。
「いいものに限って売れない」のではなく「いいとわかればある程度売れる」。

なににせよ、”篠田元一PIVOT”、新たなグループが世に出たことは喜ぶべき出来事。

・9月17日(日)
お台場のヴィーナスフォートへはじめて行く。
ゲームメーカーの『スクエア』の創業者であり、コンビニ流通で話題の『デジキューブ』の生みの親でもあられる宮本雅史氏が経営コンサルタントの大前研一氏、森ビル社長の森稔氏と共に作り出した女性をターゲットにした一大ショッピングモール。
そのコンセプトはかなり徹底されており男性はふらふらするばかりで居心地が悪そう。
やはりショッピングの場では女性に勝ち目はない。あらゆる商品を物色し、よいと思えば迷いなく買う。 物に対する好奇心と執着から産まれる活気がモールの雰囲気を活性させている。

「女性の時代」という向きでヴィーナスフォートが語られることは多い。
しかしなにか地に足がついていない感覚はある。
女性が強い、男性が弱いなどではなく、要するに”暇で平和である世の中”という事。
それは、いいことですね。

・9月15日(金)
Atomosphere= 西脇辰弥(Harm,kbd)、松原秀樹(b)、村石雅行(drs)、矢堀孝一(g),小野塚晃(kbd) のライブを六本木PIT INNで見る。
白熱した演奏を堪能。グループの音楽の個性はアルバム作品の方が際立っていた気もしたが 演奏者個々の個性や魅力をうまく表出させるバランス感覚をリーダーの西脇氏は持っている。
村石氏のDrumは本当に素晴らしく心がこもっていて感動。
スタジオNo1プレイヤー松原氏はやはりJazz専門のプレイヤーにはないめちゃくちゃ堅実なサポート でそのなんでもないフレーズに超絶な技術と個性を見た。
先日吉田美奈子のライブで岡沢章氏のプレイを見たがこういったスタジオのトッププレイヤーは 意外なことに(?) とんでもなく個性を持っている。”個性”を 売りにしている人の音楽はいろいろとごまかしているところが 胡散臭いが、松原氏や岡沢氏のプレイを見聞きすると正面から堂々と 音楽と向き合う姿に”男らしさ” を感じて心地よい。

西脇氏は以前ポートフォリオというグループでも感じたがやはりいつものPIT INNには同化しない スター性を持った、きっと彼が持っているであろう”熱い想い”を感じさせるたたずまいで、それゆえに これだけ多くのファンが集まる(PIT INN満員でした)のであろうと思う。

村石氏にはうち(ZiZOレーベル)がアルバム”b”で打ち出した矢堀氏のアコースティックジャズトリオ 路線にいつか参加していただきたいと、勝手に思ってます。(村石さんよろしく!!)

・8月22日(火)
長野県松本市で行われたスペシャルライブを見る。
アルバム”b” でお世話になった山木秀夫氏(Ds)をはじめ笹路正徳氏(p)、高水健司氏(b)、
直前に出演が決まった布川俊樹氏(g)、という最高に豪華なメンバー。
演奏はジャズスタンダード中心。
きらめくようなフレーズを連発する笹路氏のピアノ、ウッドベースも最高な高水氏、大先輩に囲まれて少し緊張気味であったが抜群の歌心を発揮する若手(笑:ライブ開始時に「若手ギタリスト」と紹介されていて爆笑。)布川氏、そしてなんといっても山木氏のジャズドラムは凄い!
アルバム”b”のレコ発ライブでもそう思ったが、そうとうに音数は多いのだが少しもうるさくない。
グワ〜とメンバーの演奏を包み込むドラムの響きがたまらない。そのテクニックが決して手数うんぬんで 語られないのはドラムの持つ包容力ゆえ。
時代を築いてきた人達の本当に素晴らしい技術の集積に大感動。

ライブ終了後打ち上げにおじゃま。
午前4時頃まで楽しくよいお酒を飲む。
今や大プロデューサーでもある笹路氏の様々なお話し、その語り口調などを満喫。
「最近の若手は結構いいプレイヤー多いよ!」「〜のプレイには本当に影響されたなあ。」
「マイルスと会った時は・・・」「女性でちやほやされてるプレイヤー多いけど実力が伴わないとな〜」 意外な誉め言葉からやはり・・・という感じの辛口トークまで様々。

笹路&山木氏とは「今度また近いうちに一緒に何か作りましょう。」といったお話し。
具体的に彼等が今やりたい事もいくつかあがり、実現できたら最高に素晴らしい事。